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2026/4/28

IPO準備で就業規則を見直すべき理由|指摘されやすい条文とは

企業が株式上場(IPO)を目指す際には、財務や内部統制の整備だけでなく、労務管理体制の整備も重要な審査ポイントとなります。
その中でも特に重要視されるのが「就業規則」です。就業規則は従業員の働き方や企業の労務管理のルールを定める重要な文書であり、IPO準備企業においては法令遵守とガバナンス体制を示す基盤ともいえます。

しかし、実際のIPO準備では、監査法人や証券会社による労務調査の中で、就業規則の内容について多くの指摘が入るケースが少なくありません。本記事では、IPO準備企業が就業規則を見直すべき理由と、特に指摘されやすい条文について社労士の視点から解説します。

IPO準備で就業規則がチェックされる理由

IPO審査では、企業が継続的に法令を遵守し、適切な労務管理を行っているかが厳しく確認されます。特に証券会社のショートレビューや監査法人による調査では、労務リスクがないかを重点的に確認されます。 就業規則に問題がある場合、次のようなリスクが指摘される可能性があります。

  • 未払い残業の発生リスク
  • 労働時間管理の不備
  • 不適切な懲戒処分
  • ハラスメント対応の不備
  • 労務トラブルによる訴訟リスク


こうした問題は、企業のガバナンスやコンプライアンス体制の弱さとして評価される可能性があります。そのため、IPOを目指す企業では、実際の運用に合った就業規則へ見直すことが重要です。

IPO準備で指摘されやすい就業規則の条文

IPO準備企業の就業規則では、特に以下の項目が指摘されることが多くあります。

  1. 労働時間・残業に関する規定

IPO準備企業で最も多い指摘の一つが、労働時間管理に関する規定です。特に次のような内容は問題になることがあります。

  • 残業の申請・承認ルールが曖昧
  • 労働時間の定義が不明確
  • 固定残業代制度の説明不足
  • 36協定との整合性が取れていない


スタートアップ企業では「柔軟な働き方」を重視するあまり、勤怠管理が曖昧になっているケースがあります。しかしIPO審査では、労働時間の適正管理ができているかが重要視されます。

  1. 懲戒規定

懲戒規定もIPO準備企業でよく見直しが必要となる項目です。例えば次のようなケースです。

  • 懲戒の種類が明確でない
  • 懲戒事由が抽象的
  • 懲戒手続きが定められていない


上場企業では、コンプライアンス違反への対応が企業価値に大きく影響します。そのため、懲戒規定についても透明性と合理性が求められます。

  1. ハラスメント対策

近年のIPO審査では、ハラスメント防止体制も重要なチェックポイントとなっています。就業規則には以下の内容が明記されていることが望ましいです。

  • パワーハラスメントの禁止
  • セクシャルハラスメントの禁止
  • 相談窓口の設置
  • 調査・対応の手続き


これらが整備されていない場合、企業のコンプライアンス体制が不十分と判断される可能性があります。

  1. 副業・兼業に関する規定

近年は副業を認める企業も増えていますが、就業規則でのルールが曖昧な場合、トラブルにつながることがあります。

IPO準備企業では、以下のような点が整理されていることが望ましいです。

  • 副業の申請手続き
  • 会社の利益相反の防止
  • 労働時間管理との関係


副業を完全禁止にするか、一定条件で認めるかなど、企業の方針に合わせた規定が必要になります。

就業規則は「実態と一致していること」が重要

IPO準備企業の就業規則で最も重要なのは、実際の運用と就業規則の内容が一致していることです。就業規則が立派でも、実際の運用が異なっていれば労務リスクと判断される可能性があります。

例えば次のようなケースです。

  • 就業規則では残業申請制だが実際は申請していない
  • ハラスメント相談窓口があるが機能していない
  • 評価制度が規定されているが運用されていない


そのためIPO準備では、就業規則の見直しだけでなく、実際の運用体制の整備も同時に行うことが重要です。

IPO準備は早めの就業規則見直しが重要

IPO準備において、就業規則の整備は上場直前ではなく、早い段階で取り組むことが望ましいとされています。なぜなら、制度を整備しても運用実績がなければ、審査で評価されにくいためです。

そのため、IPO準備企業では次のようなタイミングで見直しを行うケースが多くあります。

  • IPO準備を本格的に開始したタイミング
  • 社員数が増え組織化が進んだタイミング
  • 監査法人や証券会社が関与する前の段階


早期に整備しておくことで、労務リスクの低減だけでなく、組織運営の安定にもつながります。

参考として、IPO準備における労務コンプライアンス体制構築の一般的な流れを紹介します。

STEP1:労務デューデリジェンス(労務DD)の実施

まず、上場審査に向けた課題を抽出するために労務DDを実施します。就業規則、賃金台帳、勤怠記録、雇用契約書などを網羅的に確認し、現状のリスクを可視化します。

STEP2:労務課題の特定と優先順位付け

労務DDで洗い出された課題について、リスクの大きさに基づき優先順位を決定し、改善計画を策定します。

STEP3:課題の改善・就業規則等の整備

改善計画に基づき、就業規則の見直し・整備を中心に課題の改善を進めます。労働時間管理、懲戒規定、ハラスメント対策など、本記事で取り上げた指摘されやすい条文を重点的に整備します。

STEP4:未払賃金の精算

未払賃金が発生している場合は、金額を特定し精算を実施します。状況に応じて従業員へのアンケート調査を行うケースもあります。未払い残業代の問題はIPO審査で最も重大なリスクの一つとなるため、早期の対応が不可欠です。

STEP5:整備した体制の運用

整備した労務管理体制を実際に運用し、直前期(N-1期)を通じて運用実績を蓄積します。法改正や問題事象が発生した場合は都度対応し、証券会社審査に臨みます。この運用期間が審査において重視されるため、N-2期のうちにSTEP14を完了させておくことが理想的です。

まとめ

IPO準備では、就業規則は単なる社内ルールではなく、企業のコンプライアンスとガバナンスを示す重要な文書となります。特に次のような条文は指摘されやすいため、事前に見直しておくことが重要です。

  • 労働時間・残業管理
  • 懲戒規定
  • 管理監督者の扱い
  • ハラスメント対策
  • 副業規定


IPOを目指す企業では、就業規則の整備と運用体制の構築を早い段階で行うことで、労務リスクを低減し、スムーズな上場準備につなげることができます。

IPO準備の過程で、就業規則や労務管理体制に不安がある場合は、社労士などの専門家に相談することで、より実務に即した整備を進めることが可能です。適切な労務体制の構築は、企業の持続的成長とIPO成功の重要な基盤となります。
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