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 2023/2/22南大阪総合労務事務所

変形労働時間制とは?昨年10月に変形労働時間制が無効となった判例も解説します!

 

変形労働時間制とは、一定の条件をクリアしていれば、あらかじめ所定労働時間を定めておいた日または週においては、法定労働時間を超えて労働させることができ、超えた時間分は時間外労働とはならず、残業代を支払う必要はありません。

 

業務に繁閑のある会社や業種によってはこの制度を導入することにより、より柔軟な働き方ができて残業代の抑制ができます。

この制度を導入するためには定められた要件を満たし、必要な手続きを行う必要があります。

 

今回は「1カ月単位の変形労働時間制」と「1年単位の変形労働時間制」についてわかりやすく解説していきます。

 

 

 

 1カ月単位の変形労働時間制

 

あ どのような会社に当てはまる?

 

例えば、このような会社が当てはまります。

  「1日6時間、10時間など日ごとに労働時間が変動する 」⇒ 例:介護職など

  「月初や月末が極端に忙しく、それ以外の業務量は少ない」⇒ 例:経理、人事労務など

月末月初が忙しい場合などは、月中の労働時間は短くすることができるのでより効率的な働き方ができます。

 

 

あ 労働時間はどうなる?

 

1週間あたりの労働時間を平均して40時間以内におさめる必要があり、法定労働時間の総枠の範囲内で所定労働時間の設定をしなければなりません。

1カ月単位の変形労働時間の場合は、1カ月単位で労働時間を調整するので1日の上限時間はありません。

 

引用:厚労省リーフレット 5c8450a0d34945cabbc24071aaab24a6.pdf (mhlw.go.jp)

※44時間:特例措置対象事業場(常時使用する従業員数が10人未満の商業、映画・演劇業(映画の製作事業を除く)、保健衛生業、接客娯楽業)

 

総枠の計算式は次のようになります。

   「1週間の法定労働時間×変形期間の暦日数÷7」

暦日数によって上限が決まっており、最初からこの時間を超えての勤務時間は設定できません。

暦日31日の月であれば労働時間は177.1時間におさめる必要があります。

 

 

 

あ 残業の取り扱いは?

 

 

「あらかじめ定めた所定労働時間」を超えると残業代は発生します。

ここでの残業代は法定労働時間を超えているかで、取り扱いが異なります。

 

例えば

所定労働時間7時間と定めている日 ⇒ 実労働時間9時間

  残業:8時間までの1時間は法定内残業、8時間を超えた1時間は時間外労働となり割増が発生します。

 

あ 導入の流れとポイント

 

 

導入にあたり、労使協定又は就業規則その他これに準ずるもの(就業規則等)に、次に掲げる事項を定める必要があります。

  ① 対象労働者の範囲

  ② 対象期間および起算日

  ③ 労働日および労働日ごとの労働時間(勤務表など)

労使協定によるか就業規則等によるかは任意ですが、労使協定で定める場合には「労使協定の有効期間」「所轄労働基準監督署に届出」も必要になります。

 

 

あ 1カ月単位の変形労働時間制のポイント

 

  ✔ 1カ月の労働時間は上限時間内で設定が必要

  ✔ あらかじめ労働日ごとの労働時間を定める

  ✔ シフトは前月末日までに確定する(例:2/1~のシフトは1/31までに確定)

  ✔ 労使協定又は就業規則その他これに準ずるものに、勤務表やシフトパターンを定める

 

 

 

 1年単位の変形労働時間制

 

あ どのような会社に当てはまる?

 

例えば、このような会社が当てはまります。

  「季節によって業務に繁閑がある」

  「年間を通して繁閑の差が激しい」

    ⇒例:デパートやスーパー等の流通業、学校の先生、イベント会社など

労働時間の効率的な配分とその短縮をすることができ、より効率的な働き方ができます。

 

 

あ 労働時間はどうなる?

 

1年間の労働時間を平均して40時間以内におさめる必要があり、労働時間と日数の上限もあります。

期間が長い分管理が自由になりがちなので、しっかりルールが定められています。

 

 ・1日の労働時間:10時間まで

 ・1週間の労働時間:52時間まで

 ・連続労働日数:6日まで(特定期間は12日まで)

 

対象期間が3カ月を超える場合は以下の上限も発生します。

  └  週48時間を超える勤務:連続3回まで

  └  3カ月間に週48時間を超える勤務:3週以内

  └  1年あたりの労働日数:280日まで(うるう年の場合も同じ)

 

対象期間中の所定労働時間合計の計算式は次のようになります。

   「1週間の法定労働時間40時間×対象期間の暦日数÷7」

   1年の場合 ⇒ 40×365÷7=2085.7時間

※1年単位の変形労働時間制は特例措置対象事業場(44時間)には適用されません。

 

 

あ 残業の取り扱いは?

 

「あらかじめ定めた所定労働時間」を超えると残業代は発生します。

①日 ②週 ③変形対象期間 ごとに計算する必要があります。

 

① 1日の残業時間

 労使協定により8時間を超える労働時間を定めた日はその時間を超えて、8時間以下の労働時間を定めた場合は8時間を超えた時間は残業の支払いが必要です。

② 1週間の残業時間

 「1週間40時間を超えた時間」は、残業の支払いが必要です。

③ 変形対象期間での残業時間(①②で時間外労働となる時間を除きます。)

 「変形期間を通じて週平均40時間を超えた時間」が時間外労働となります。

 40時間×(対象期間の暦日数÷7)を超えて労働した時間は、残業の支払いが必要です。

 

 

 

あ 導入の流れとポイント

 

導入にあたり、労使協定において次に掲げる事項を定める必要があります。

 

  ① 対象労働者の範囲

  ② 対象期間および起算日(1カ月を超え1年以内の期間に限ります。)

   →起算日は、給与計算がややこしくならないように集計の初日に合わしておくといいでしょう。

  ③ 特定期間

   →対象期間中の特に業務が繁忙な期間

  ④ 労働日および労働日ごとの労働時間(勤務表など)

  ⑤ 労使協定の有効期限

 

 

対象期間が1年の場合は、年間カレンダーの作成も必要です。

年間カレンダーは労働者に対して周知する必要があり、労働者に周知が徹底できていない場合は残業代や勤務時間をめぐりトラブルに発展しかねないため、注意が必要になります。

 

 

あ 1年の変形労働時間制のポイント

 

  ✔ 日、週、対象期間が3カ月を超える場合など各上限日数・時間がある

  ✔ 労使協定で定め、届出なければならない(1年単位の変形労働時間制では就業規則では定められない)

  ✔ シフトは前々月前までに確定する(例:2/1~のシフトは12/31までに確定)

  ✔ 特例措置対象事業場(44時間)には適用されない

 

 

 導入における注意点

 

シフトの変更はできるのか

 

使用者が一方的にシフトを変更することはできません。

やむを得ない正当な理由がある場合は、シフト変更ができる場合もありますが原則不可です。

やむを得ずシフトを変更した場合は、変更理由や時期などの内容を後から追えるように記録に残しておくほうがいいです。

 

 

変形労働時間制導入中に中途入社・途中退職した場合はどうなるのか

 

1年間の変形労働時間制では、対象期間より短い労働者については清算が必要になります。

全期間を平均した場合に週40時間以内となるように設定しているので、実際の労働期間で週40時間を超える分は割増賃金の対象となります。計算式は次のようになります。

 

 

   割増賃金の支払いが必要な時間数=実労働時間-(40時間×実労働時間の暦日数÷7)

 

 

また、週40時間に満たない時間であれば、その分は賃金を減額する必要はありません。

 

 

 昨年10月に「1カ月の変形労働時間制が無効」とされた判例がありました

 

 

日本マクドナルドでは1カ月の変形労働時間制を導入していましたが、未払い残業代を請求されました。(名古屋地裁令和4年10月26日判決)

 

就業規則には4つのシフトパターンは定めていたものの、全てのシフトパターンは同社の就業規則に定められていませんでした。

会社側は「全店舗(直営864店)に共通するシフト設定は不可能」と主張しましたが

「就業規則で定めていない店舗独自の勤務シフトは労働基準法の要件を満たしておらず無効。事業規模によって例外が認められるものではない」

とし、原則通りの計算による未払い残業代約61万円を支払うこととなりました。

 

 

この判例では、就業規則等に「具体的なシフトが書かれていないこと」が問題になりました。

 

シフトパターンをすべて書くのは不可能な業種はあるかもしれませんが、なるべく想定されるパターン(店舗や事業場ごとなど)を記載しておきましょう。

「附表のとおりとする」などと記載する場合にも、附表が付属していなければなりませんし、内規では認められません。

 

現在、導入されている事業所様はシフトパターンや勤務表が定められているかを改めて確認しましょう。

 

 

 まとめ

 

労働時間を弾力化することにより、業務の繁閑に応じた労働時間の配分等を行うことにより効率的な働き方や労働時間の短縮を図ることを目的とし変形労働時間制が設けられました。

 

会社側のメリットだけではなく、従業員の方にとっても忙しい時とそうでないときと、メリハリをつけてより柔軟に働くことができたり、まとまった休みを取ることも可能になります。

 

今回解説したように、制度を導入するためには定められた要件を満たし、必要な手続きを行う必要があります。

1年単位の変形労働時間になると、さらに細かなルールもありますので、まず自社は導入すべきなのか、導入すると自社にどんなメリットがあるのかしっかり考えて進めることが大切です。

 

弊所ではご相談から運用までサポートもしておりますので、ご興味のある事業所様はぜひ南大阪総合労務事務所までご連絡ください。

 

 

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