今回は、メンタルヘルスにおける管理職の基本姿勢と初期対応、部下の異常を察知する際のポイント、話の聴き方等についてご紹介します。
部下を持つ管理職の方は、ぜひ参考にしてください。部下の異変に「気づく」、傾聴の姿勢で話を「聴く」、管理部や産業医に「つなぐ」この3つが非常に重要となります。
この記事を読んで、チームマネジメントの基本を学び始めましょう。
メンタルヘルスマネジメントの基礎知識
メンタルヘルスは、精神障害の1つで、発症原因は今のこところわかっていません。
また仕事の関係だけでなく、プライベートや本人の特性(性格・ストレス耐性、遺伝)等、様々な要因が絡み発生します。
以下で厚労省等から発表されている数字でメンタルヘルスの現状を認識してください。
日本では、100人に6人が生涯のうちにうつ病を経験
女性の方が男性よりも1.6倍くらい多い
職場に目を向けると、2020年11月1日から2021年10月31日の1年間に、メンタルヘルス不調により連続1カ月以上休業した労働者がいた事業所の割合は8.8%
年代で見ると働き盛りの30代がもっとも多く発症している
数字からもわかるように、管理職の方はメンタルヘルスが非常に身近であること、またいつ・誰が・どのような形で発症してもおかしくないことだと認識する必要があります。
メンタル不全への対処を怠れば、会社から管理者に権限が委譲されている「使用者の責任」が問われます。
場合によっては、管理者に数千万円から時には1億円以上の損害賠償請求に至るケースも出てきますので、自分事としてとらえることが重要です。
メンタルヘルスを予防するには、メンタルヘルスの基本を理解し、部下の状況をしっかり把握し、日ごろのコミュニケーションを見直していくことが重要になってきます。
以下にて、ポイントを見ていきましょう。
(1)部下の異変に「気づく」
メンタルヘルス対応で最初のステップは、部下の異変に「気づく」ことです。
管理者は、部下に異変がないか常に注意を払う必要があります。「気づく」ためのポイントは以下の3つです。
勤 怠 の 異 変
もっとも分かりやすいのが、「勤怠」に出てくる異変です。
メンタルヘルス不調になると、不眠、早朝覚醒、日内変動(午前中体調が悪く、夕方にかけて良くなる等)、集中力低下等がおきます。
そうなると、朝ぎりぎりに来るようになったり、遅刻が出たり、仕事中に寝てしまったりと、目に見える形で現れます。
い つ も と 違 う が 増 え て き た
” いつもできていた事が急にできなくなった “ いつもと違う「ズレ」がでてきたら注意が必要です。
元々ミスが多い部下だからと決めつけず、「今日はいつもよりミスが多いけど、何かあった?」等話しかけてあげることが大切です。
周 り と の 「ズレ」 が 目 立 つ よ う に な っ て き た
集団の中において、孤立している、常に敵対する態度を取っている等があれば注意が必要です。
問題社員として片付けるのではなく、何に不満を持っているのか?丁寧に聞いてあげることが大切です。
↓ 以下のチェックリストにて該当する項目がないか確認することも有効です◎
管理者は、部下の健康と安全を確保するために、上記チェックリスト等を活用し、早めに兆候や症状を認識し、適切に対応することが重要です。
(2)「話を聴く」
部下の異変に気づいた後は、「話を聴く」ことが大事になってきます。
メンタルヘルス不調者の特徴として、自分から伝えることが難しくなっている場合もありますので、普段使っている「聞く」ではなく、心から「聴く」(傾聴する)ことがポイントとなってきます。
具体的には以下のようなものがあります。
✓ 基本姿勢は「傾聴」(関心がある姿勢を示す)
①視線・・・視線を合わせる
②身体言語・・・腕や足を組んだりしない
③声の調子・・・相手の気持ちに寄り添う
④言語的追跡・・・相づち打ったり、うなずいたりして話し安い雰囲気を形成
✓ 話を遮らない(結論を先取りしない)
✓ 適切なタイミングで「オウム返し」を行う
→ 「~で大変だったんです。~は大変だったね。」
✓ 相手の話の内容や考えを否定しない
✓ 自分の考えを押し付けない(こらえる)
「理解すること」より、「受け止める」ことが大事です。意見をすることなく、肯定の姿勢で受け止めながら聴くよう意識しましょう。
!! ついつい言いがちな「でもね!」や「いや」は封印して、聴き切ることがポイントです。
また、部下の健康情報を含む個人情報の保護についても意識する必要があります。
むやみに周りに話さないことはもちろんですが、管理部や産業医等に連携することが必要な場合は、本人にも「管理部に伝えてよいか」等意思を確認しましょう。
共感と理解をもって対応することで、マネージャーは、チームのメンタルヘルスのニーズに対応し、チームが職場で直面する可能性のある課題に対処できるようにすることができます。
(3)管理部、外部機関(産業医等)に「つなぐ」
メンタルヘルス不調になった方は、中々自分からは言い出せない、相談できない人が多いのが実情です。
皆さんの方から、管理部や産業医等につないで、早期対応を促しましょう。
まとめ
管理職に求められることは年々増えてきています。
今回のメンタルヘルスだけではなく、人事評価やパワーハラスメント、セクハラハラスメント、成長・育成等々・・・非常に大変ですが、これらの課題や問題に取り組むための第一歩目として「部下に関心を持つ」ことがあげられます。
日頃部下の仕事ぶりはどうか、注意をしたときに部下はどんな表情をしているか、いつもより顔色が悪いのではないか、元気がないのではないか。近年のマネジメントはこういった部下の変化を捉え対処していくことが求められます。中々急にはできませんが日頃の積み重ねが、安全でポジティブな職場環境を確保し、イキイキとみんなが働ける環境につながると思います。
万が一部下がメンタルヘルスの不調になれば、長期にわたり休職や復帰に向けての配慮だけでなく、あなたの管理職としてのマネジメント能力にも疑問の目が向けられます。
まずは「部下に関心を持つ」ことから始めてみましょう。