最近、特に多くの企業様から時間単位有給休暇の導入についてご相談をいただいています。
時間単位有給休暇を導入することで、従業員のワークライフバランスを良好に保つことが可能になります。
しかし、時間単位有給休暇の導入には、正確な理解と多くの注意事項が必要です。
今回は、時間単位有給休暇を導入するために、見落としがちな3つのポイントについてご紹介します。
知らないうちに法律違反をしていたということがないよう、ぜひ見直してみてください。
時間単位の有給休暇を導入するメリット
時間単位の有給休暇を導入するメリットは、従業員のモラルやパフォーマンスの向上、離職率の低下など多岐にわたります。
時間単位の有給休暇を導入する主なメリットには、以下のようなものがあります。
✔ 従業員のパフォーマンス向上
他の休暇と同様に、有給休暇は従業員のストレスや疲労を軽減し、全体的なパフォーマンスを向上させるのに役立ちます。
✔ モラルとエンゲージメントの向上
有給休暇を取得することで、必要な時に自由に休みを取ることができるため、社員の会社に対する士気や忠誠心が高まることが期待できます。
✔ 離職率の低減
有給休暇は離職率の低下にもつながります。会社が自分の健康を気にかけてくれていると感じる社員は、他の仕事を探す可能性が低くなるからです。
時間単位有給休暇の法的要件を理解する
時間単位の有給休暇を導入する前に、法的な要件を理解しておくことが重要です。
まず、1番に必要なのは、労使協定の締結と就業規則への記載です。記載事項については以下になりますので、抜け漏れなく記載することが求められます。
( 引用:働き方・休み方改善ポータルサイトhttps://work-holiday.mhlw.go.jp/ )
① 時間単位年休の対象者の範囲
仮に一部の者を対象外とする場合には、事業の適正な運営を妨げる場合に限られます。「育児を行う労働者」など、取得目的などによって対象範囲を定めることはできません。
② 時間単位年休の日数
1年5日以内の範囲で定めます。
③ 時間単位年休1日分の時間数
1日分の年次有給休暇が何時間分の時間単位年休に相当するかを定めます。1時間に満たない端数がある場合は時間単位に切り上げてください。
④ 1時間以外の時間を単位として与える場合の時間数
2時間単位など1日の所定労働時間を上回らない整数の時間を単位として定めます。
時間単位有給休暇を導入する際の留意点
いざ、時間単位の有給休暇を導入しようとすると、細かい解釈の違いで、知らない間に法律違反をしている場合が見られます。
以下に具体的なポイントを3つ記載します。下にいくほどマニアックな論点になりますが、是非最後まで読み続けてください。
① 時間単位の有給休暇は有給の5日付与義務のカウントは出来ない
こちらは知っている方は多いと思います。
半日単位の有給休暇は、2回取得すれば5日付与義務の1日としてカウント可能ですが、時間単位の有給休暇の場合はできません。
5日付与義務を達成するために導入する場合は、逆効果ですので注意が必要です。
② 時間単位の有給休暇を取得するタイミングに制限はかけられない
時間単位の有給休暇を運用するにあたり、例えば、中抜け(勤務時間の途中)を禁止したいという相談を受けます。
一見良さそうに見えますが、実はこちらは制限をかける事ができません。(基発第0529001号 平成21年5月29日)
有給休暇はあくまで、社員が自由に取得できるものであり、会社がそれに制限を加えるには、時季変更権の問題となります。
有給休暇における時季変更権は、正直なところほぼ認められないと考えた方がよいです。(休むことで、会社の事業運営に支障が出る場合は認められる事もありますが、会社がそれを証明する事は難しいです。)
この考え方が時間単位の有給休暇にも適用されます。よって中抜けを禁止する事は、例え労使協定に記載したとしても認められません。
③ 1日の所定労働時間が8時間より短い場合の1日のカウントについて
1日の所定労働時間が8時間の会社は気にしなくて良いですが、例えば7時間50分、7時間30分等の会社は注意が必要です。
有給休暇を時間単位で取得した際に、1時間未満の端数が発生した場合は、切り上げて1時間とする必要があります。
課題的な例を出すと、1日の所定労働時間が7時間30分の場合は、8時間取得して初めて1日取得したとカウント出来ます。
(ここの論点はマニアックなため、勤怠システムの会社も把握しておらず、7時間30分で1日と設定してしまっていることもよく見受けられます。)
時間単位有給休暇の円滑な運用
有給休暇を導入するための法的要件を確立し、上記の点を考慮したら、次に制度を円滑に運用する方法に焦点を当てるとよいかと思います。
不要だと思われている制度を導入してもあまり意味がないので、従業員にヒアリングをしたり、アンケート調査を実施するのもよいかと思います。
予めヒアリングやアンケートの実施することや、制度に納得してもらうことにより自然と制度周知や納得感にもつながります。
また少し打算的な話になりますが、時間単位の有給休暇を導入する事とセットで、社員にお願いしたいことをセットで伝えることも有効な手段です。
社員の主張を受け入れるだけでなく、会社としての規律やルールを整備していくことがしいては、優秀な社員の満足度向上につながるかと思います。
まとめ
以上、時間単位有給休暇の導入は、従業員のワークライフバランスを健全に保つための素晴らしい方法であると言えます。
しかし、制度を成功させるためには、法的要件や適用される法律を理解し、必要な注意を払い、制度を円滑に運用することが重要です。
これらの注意事項を守り、従業員と適切なコミュニケーションをとることで、時間単位有給休暇は士気と生産性を向上させる効果的なツールとなります。